環境への影響は?<遺伝子組換え植物・連載第5回> | ある植物学者の視点。

環境への影響は?<遺伝子組換え植物・連載第5回>

一日間があいてしまいましたが、今日は遺伝子組換え植物の環境リスクについてです。現在普及している遺伝子組換え体は、前回も述べたように除草剤耐性、害虫防除能(殺虫、忌避)を付与されたものです。我々が食糧としている植物(作物)が生まれてきた要因でもある自然交配によってこれらの遺伝子が雑草に伝播することにより、この形質を持った雑草が無作為に生まれてしまうことで、除草剤による雑草除去(=作業軽減)が出来なくなってしまうかもしれません。また、害虫忌避の蛋白質が広まっていくとその種類の虫が激減、または滅亡して生態系を狂わせるかもしれません。もっと恐ろしいのは、遺伝子導入の際に組替え体を選抜するために目的遺伝子と同時に導入される抗生物質耐性遺伝子が広まっていった場合です。植物に広まっていくことにはそれほど大きな脅威とはなりえませんが、これが仮に病原微生物に伝播した場合にはその抗生物質が効かないために従来の知見に基づいた処方では根治できず、治療の遅れ、症状の悪化を引き起こす可能性があります。無論、これまでに述べたように異種生物間での遺伝子伝播は確率的に非常に難しいのですが、全く起こらないとは言い切れません。事実、植物への遺伝子導入はアグロバクテリウムという微生物を感染させることで行いますから。