生物学者の慢心と遊び心。 | ある植物学者の視点。

生物学者の慢心と遊び心。

今年のクリスマスイブ、国立研究機関の研究者2名が過去に国際雑誌に発表した論文に捏造されたデータが複数含まれていたことが公になりました。当該の研究員は10月に退職(解雇ではないらしい。つまり、退職金が支払われた?)し、論文の取り下げ手続きが進行しているとのこと。つまりは、すべての処理が終わってから公表されたということでいかにも旧態依然としたやりかたに世間の目も厳しいものとなりつつあります。

研究者というのは、いかに著名な国際雑誌に論文を採択されるかで評価を受けます。今回も、地位の向上と維持の為に不正に手を染めたのでしょう。実際にはたった一つのデータを出すのに多大な労力と時間を要するのですが、これを捏造するとなれば一瞬でお望みのデータを得る(作る)ことが出来てしまいます。そのために一度、捏造の味を知ってしまうとこれを繰り返すようになるのは自明の理です。また、一流の国際雑誌に掲載されると多方面から高い評価を受けることとなり、根拠のない慢心までが産み出されていくのです。他人の意見に耳を貸さず、正当な意見にすら激昂するよう指導者には要注意。。。

捏造は学術の発展を大きく妨げますし、何も知らずにそのような者の指導を受ける学生が不憫でなりません。また、彼らの研究費として多額の税金が投入されたことも忘れてはなりません。

我々は研究の過程で、新しい遺伝子、物質を発見・創出したり、研究上有益な動植物の変異体を発見することがあります。新しいものには当然、名前を付けますがこれには研究者自身が遊び心を生かした面白い例があります。
日本人研究者が発見した、メスに興味を示さないオスのショウジョウバエ変異体は、女性に興味を示さない=悟りを開いた、との発想でsatoriと名付けられています。また、人間の細胞生理的に重要な遺伝子としてモームス1という遺伝子があります。お察しの通り、モーニング娘というアイドルグループにちなんでいるらしいです。。。
私も過去に、いくつかの遺伝子に命名をしました。その際、何か面白い名前をつけようかと考えたものですが、業績リストに書くことを考えるとなかなか踏ん切りがつきませんでした(苦笑)