研究者への報酬。 | ある植物学者の視点。

研究者への報酬。

昨日、東京高裁において現カリフォルニア大学教授である中村氏と、かつて所属していた日亜化学工業との間で行われていた発明対価を巡る訴訟についての和解が行われました。この訴訟については、昨年200億円もの支払命令がなされたこともあり世間の注目を集めていました。和解額の約6億円という金額は私を含めた多くの方にとって莫大な金額ですが、これは本当に正当な対価であると言えるのでしょうか? 一審、東京地裁の算定では会社側が特許の独占に伴って得た収入は1200億円余りと算定していました。金額だけでいえば、余りにも些少な額であると感じられると思います。この訴訟は研究者が発明により対価を得る上で、象徴的な事案でした。その他一連の訴訟が引き起こされたことは、現在国内の大学で数多く設立されている学内ベンチャー企業を生み出す上で、実に大きな役割を果たしたといえます。多額の報酬を得るというのも、研究者の活力を生み出す上では非常に有効な手段だと思いますし、国立大学が独立法人化した現在では従来のように共同研究先に利益を提供するのでなく、大学独自に起業して収入を得るということも必要でしょう。 ですが、私個人の意見をあえて述べるならば、個人的な対価はあまり欲しいとは思いません。大学または学部において報酬や収入を管理し、研究費として自由に活用できればこれが最良だと感じています。世間には知られていないと思いますが、研究費というのはプロジェクトを提案する書類を作成し、これが採択されて初めて支給されます。公的補助の多くは年度開始後にその合否が発表されますので、4月に学生にテーマを与えて実験を開始しても予算がとれずに消滅・・・なんてことも実際に起きているそうです。(幸い、これまでそのような事態に遭遇したことはありませんが。)また、昨今の任期制導入により職の安定も揺らぎつつあります。発明により対価を得て、また大学の知名度を高めた方には任期・定年の撤廃と発明対価の研究費としての安定給付を行えば、科学振興の観点からも非常に有益であると考えています。 まあ、私は基礎研究をやっているので発明とか対価とか、無縁な訳ですが・・・・残念!!