酒税。 | ある植物学者の視点。

酒税。

不景気の長期化もあり、普通のビールではなく、発泡酒を飲まれている方も多いと思います。カロリーやプリン体含量の関係から健康の為にも発泡酒が好まれているという話も聞きますが、当初の最大の魅力は酒税の安さによる低価格でした。しかし、これに対応したビール販売量の減少=酒税収入の減少に困ったのか、発泡酒の爆発的ヒットに目を付けたのか、発泡酒への酒税引き上げが行われました。これは、不景気で売上の低下した各社がその打開のために行った企業努力を無にする行為であったといえます。

そして現在、「第三のビール」と言われるビール風飲料(税制上、その他雑酒に分類)に対しての課税強化が検討されているそうです。サントリー、サッポロに続いてアサヒ、キリンまでがその発売に向けて進む中で、またしても同じことが起こるのでしょうか。ビール風飲料に関してはサッポロのドラフトワンがそのパイオニアであり、その他は後追い商品に過ぎないという感が否めませんが、それでも各社、多大な開発費を用いて低価格商品を作っているのであり、これが増税で売れなくなってはたまったものではないでしょう。

お酒の話ですので、少し微生物の話をしてみましょう。お酒に含まれるのはアルコールですが、これは原料に関わらず、ほぼ全てのお酒は酵母という真核微生物が酸素のない嫌気条件下において原料中の糖をエタノールに分解する(酵母はこの反応エネルギーを用いて生育)ことで得られます。米や麦の主成分はデンプンなのでこれを酵母が直接利用することはできませんが、麹(カビ)や植物原料自身がもつアミラーゼによりあらかじめこれを糖に分解することでアルコール発酵の原料となります。

日本酒やビールなどの場合、この酵母は原料に加えられるものですからどのような酵母株を使うかでその味などが変わってきます。これは、副産物として出来る芳香成分などの種類や比率が異なることによります。ワインの場合、これが大きく異なります。ブドウの房を思い浮かべていただくとわかるのですが、ブドウの粒には表面に白い粉がふいています。実はこれが酵母で、ワインはこの天然酵母によって醸造されます。ワインの味が品種だけでなく、気候や風土によって異なるのは、ブドウの味だけでなく酵母の違いも効いています。